冨士山信仰を支えた「御師」
「御師住宅」とは富士登山の際に宿泊場所や食事の提供をして冨士山信仰を支えた「御師」の家です。
「御師」とは富士山信仰の崇拝者の代わりに富士山の神仏に祈願してくれるだけでなく、自宅を宿泊場所や食事を提供して信者の世話をしたり、富士山信仰の布教活動を行った人々です。
また、「御師」は冨士山信仰の信者の家を回り、家内安全や病気回復の祈祷を行ったり、札を配ったりしました。
各富士山登山道の起点近くの街道沿いに「御師住宅」が軒を連ねて宿坊町を形成し、全国各地から訪れる登山者を受け入れてきました。
2013年6月に世界文化遺産に登録された「富士山」の構成資産には山梨県富士吉田市の「旧外側住宅」と「小佐野家住宅」の2軒の「御師住宅」が含まれています。
室町時代の末期には既に「御師」の活動の記録がありますが、最盛期の江戸時代には冨士吉田市の金鳥居と北口本宮浅間大社の間には80軒以上の御師の家が建ち並んでいました。
旧外側家住宅
山梨県富士吉田市の「旧外側家住宅」は明和5年(1768年)に建造された最古の「御師住宅」です。
山梨県指定文化財、国指定重要文化財とされており、2013年6月には世界文化遺産「富士山」の構成資産にも登録されました。
現在は富士吉田市に寄贈され、富士吉田市民俗博物館の付属施設として管理されています。
敷地面積は約2千平方メートルで、敷地には母屋、裏座敷、中門、水路、離座敷があります。
冨士山信仰の登山者が増える度に増築が行われ、最盛期には一晩で100人以上が宿泊下といわれます。
敷地内を横切る水路には北口冨士浅間神社から流れる湧水が流れており、登山者はまず水路で手足を清めてから奥の母屋へ足を運びました。
奥の座敷には御神前が置かれ、登山者達は御師と共に御神前の前で拝礼の儀式を行って信仰登山に備えました。
「旧外側家住宅」は一般公開されており、入場料を支払えば見学もできます。
大人100円、小中高生50円で20名以上の団体割引もあります。
開館時間は午前9時30分から午後5時までで、入館は4時30分まで可能です。
富士吉田市民俗博物館の入場券を持っていれば入館できますが、先に住宅で入場料を支払った場合は差額を払えば博物館にも入館できます。
駐車場は普通車17台、大型2台、身障者1台が利用できます。
小佐野家住宅
「小佐野家住宅」は「旧外側家住宅」と同じく吉田御師の家である「御師住宅」として富士山信仰を支えてきました。
現在の住宅は文久元年(1861年)に再建されていますが、昭和51年には国の重要文化財に指定されました。
現在も個人が住んでいて非公開となっていますが、富士吉田市民俗博物館には小佐野家の復元住宅が展示されています。
コメント